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プロフィール

HN:
ユエファ・レィ
性別:
女性
職業:
ストリートファイター×ダンピール
自己紹介:
イラスト作品は、㈱トミーウォーカーのPBW用のイラストとして、yue_rが作成を依頼したものです。 イラストの使用権はyue_rに、著作権は夜神紗衣絵師様に、全ての権利は㈱トミーウォーカーが所有します。

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時を駆ける兎の物語3

エイプリルフールネタSS、みっつめ。たぶん最終話。


傍に在ることを、許してくれるならば…

静かだ。本当に…
ここでは、時の音がほとんど聞こえない。

人間に血潮の時計があるように、
そのものが刻んでいる時が、兎には時計の音のように感じられる。
いつでも、どんなものにも、時を刻む音が聞こえるのだけれど…

ここには、それがない。

この場所が、人の望む時と繋がってしまう不思議な場所だからかもしれないけれど…
それよりも不思議なのは、傍らに居てくれる、この人から時の音がしない事。

「存在が尽き果てる事だけは決して無い」と、この人自身がそう言っていたから…
寿命と言うものが果てしなく長いか…、あるいは存在すらしていないのだろう。
それこそ、どんなに耳を澄ましても、時を刻む音すら聞き取れぬほどに。

だから、人間がここに来ると、直ぐに判る。
ここでは人間の時だけが、大きく、早く、時の音を奏でるから。

人間が来たら、私はこの人の袖を引いて
それを伝える。

そんな事をしなくても、遅かれ早かれ
この人は、人間が来たことに気づくのだろうけれど…

私がここでできる、数少ないことの1つだから…
それに、この人が応えてくれるから…

私を『ユエ』と呼んだ、この人が…

 


『ユエ』と呼ばれた…
その声に、全く別の誰かの声が重なって、
その誰かの事を思い出して、はっと振り返る。

けれど…

瞬き一つの間に、その記憶は霧散して
誰が「ユエ」と呼んだのか…
誰を「ユエ」と呼んだのか…
もう…判らなかった。

何も判らなくて、でも悲しくて泣いていたら
その人は言ってくれた。

途切れ途切れの言葉だったけど…
望んでいい…と、そう言った。

全て癒える、その日まで、ここに居ていい…と。

だから…

私の時の魔法は、きっとこの人には意味を成さないけれど…
せめて、ただ1人で過ごす虜囚の時からくらいは、守れるかもしれない。

この人が、孤独を感じることがあるのかは判らないけれど…
少なくとも私は、1人は嫌だ。

目覚めてから、この人が来てくれるまでの…あの短い時間ですら。
悲しくて、
寂しくて、
けれど…呼びたい名前も判らなくて、
1人は…とても寒かった。

だから、全て癒えるその時までは、
この人の…傍に。

この人が『ユエ』と呼ぶたびに、
人間で言えば少年と言えるこの人の姿に、別の姿が重なる。

それもやはり一瞬の事で、
どんな姿だったのか、思い出すことすら許されないのだけれど…

そのたびに…また少し胸が痛むから、
全て癒える日は、まだずっと先の話…だと思う。

あるいは、ずっと傷が癒えることなく
私が、詠唱時計と少量の詠唱銀を残して消える日が来たとしても…

この人は私を、傍においてくれるだろうか…?

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